作るのはやっぱり人なんだな
昨日は仕事の合間をみつけ、建築家の内覧会に行ってきました。
久々に良い建築を見せて頂いたので、こちらに書かせて頂きますね。
僕が建築を始めたのは27歳の時で、学生の頃から建築に励んでいる人と比べると随分と出遅れていることは明らか。少しでもその差を縮めようと初めの3,4年は本当に毎週のように建築家の内覧会(オープンハウスともいう)へ行っていた。
この頃は、毎月5,6件の内覧会に行っていたように思う。
水・木曜辺りになると週末に内覧会がないか調べ、その建築家のHPを読み漁り、建築好きの方をお誘いして一緒に良く行ったものだった。
それを思い出し、久々に今回行ってきました。
もちろん建築好きな方をお誘いして。
お邪魔させて頂いたのはオンデザインパートナーズの内覧会。
以前からずっと行きたい!行きたい!!と思っていたものの、なかかな機会に恵まれず見学できずにいた設計事務所の一つでした。
場所は東京都内の公園に隣接する閑静な立地で、クライアントの「公園にある豊かな緑は取り入れたいけれど、プライバシーは守りたい」という要望に応えた住宅。
「公園の豊かな緑を取り入れる」というと、公園に向け窓を設け開放的にするのだけれど、一方その代償として他人からの目線が気になってしまう。という、プライバシーの確保がなかなか出来ないところ。
が! 今回は地下を作ったり、1階、2階はあえて腰窓にして視線を遮る工夫をしたりと、クライアントの要望に応えるべく工夫をされているのが凄く印象的でした。
地下1階はこんな感じ。
通常光が届きづらい地下部分は圧迫感を与えないよう、また公園の緑に視線が向くようRC塀を斜めに設置し開放性を確保したり。
2階のリビング部分はこんな感じ。
目の前は一面が緑! 気持ち良さそうなの伝わってきますよね?
豊かな緑はしっかり感じれるけど、周りの視線は全く気になりません。
そして季節感もしっかり感じとれそう。
こういった建築を見せて頂くと。この裏側にある設計者の膨大な苦労が見て取れます。
例えば、上の写真。こちら正面下部に見えるのは、1階から上がってくる階段なのですが、この手摺りがすごく軽やかだと思いませんか?
えっ?揺れそう?
そう。このように軽やかに見せようとすると、どうしても強度が低下しグラグラ揺れる手摺りになりがちなのですが。。。どうしたことかこれは触れてもほとんど揺れません!
なぜだ?なぜだ!?
と、いろいろ細かいところまで見てそのマジック!?を解明しようと試みます。
が、それだと結局は僕の想像でしかなく、本当のところは設計者に聞いてみないと分からない。
ということで、実際に聞いてみました。
フフフ。謎は解けましたよ。
ええ。もちろん、この後電車の中で、すぐさまメモを残したのは言うまでもありません。
よし!これで、こんな軽やかな手摺りも、パク・・・
いや、リスペクトして僕の設計に活かそうと思っています。
そして、今回最も感動したのは、オンデザインのスタッフの方々の対応でした。
いつもそうなのですが、分からないことがあると僕はスタッフの方に直接質問します。
(だって、そのために時間を使って行ってる訳ですからそりゃ当然か。笑)
こういう場合、たくさんの内覧者が見学に来るため、このプロジェクトに直接関わっていないスタッフの方も応援に来ることが一般的なのですが、オンデザインの方は担当者でなくとも基本的な内容がきちんと頭に入っていらっしゃいました。(担当じゃなければ建築面積くらいしか知らないスタッフとか結構多い)
そして担当の方は、質問には図面を見せながら説明してくれますし、上記の手摺りの話でも、「こういう点が難しかった」「他にはこういう選択肢もあった」「クライアントさんはこういう点で心配されていたが、こういう解決をした」など、設計者として気を遣った点や工夫を余すところなく説明してくださいました。
これは僕にとって本当に有難いことでした。そして、今回僕が何の目的で内覧会に来ているのか。 僕の立場になって考えて対応してくださったからなのだと思いましたし、これはクライアントさんにも同じように接していらっしゃるように感じました。
また、構造家が責任を持つ構造部分についても、担当のスタッフさんに結構詳しく質問させて頂いたのですが、もうすべてにお答え頂き、責任感の強さを感じるとともに、安心感を与えてくれるようでした。
思い起こせば、昨年竣工した住宅改修「+(プラス)」で、そのクライアントは住宅の改修経験が一度もない僕に設計をお願いしてくださりました。当時はお仕事を頂けたことが嬉しく、懸命に設計していたばかりでしたが、今振り返ってみれば、僕に期待されていたことはこれだったのかもしれません。
そしてもちろん、竣工して1年以上経つ今でも仲良くさせて頂いています。
住宅って、いくら建築的に素晴らしい設計だったとしても、それがクライアントの方を向いていなければ全く意味のないものになってしまうんですよね。
人が人に向き合って作ることの大切さを強く再認識させられた機会となりました。
※写真は建主(クライアント)様にご迷惑が掛からないよう、周辺環境に一部モザイクを入れさせて頂いております。